· 

ロシアの蛮行とM&A仲介業

プーチンが戦争を始めました。強権国家による一方的な侵略です。小国による已むを得ない自衛戦争ではなく、強国による大儀なき侵略です。

 

普通、仮に一方的な侵略であっても、もうちょっともっともらしい大儀というか、あくまでも自国の自衛のためだなどと、どうみても苦し紛れであっても、それなりの牽強付会が伴うのが常だったのですが、今回のプーチンはそんな手間のかかる段取りを一切スキップして、強欲だけを剝き出しにしました。

 

あれ?

既視感があります。

しかも、つい先日、どこかで見たような、聞いたような。。。

 

そうです、あれは2月14日、バレンタインデーの日でした。

いまをときめく中小企業向けM&A仲介業の草分け、日本M&Aセンターが不正会計を発表しました。

 

同社のリリースには、こうあります。

「2018年4月以降において83件が期ずれ等により不適切に会計処理がなされていたとの報告を受けました。」(同社2022年2月14日付リーリース「過年度の訂正報告書等の提出及び決算数値提出に関するお知らせ」

 

へー、期ずれですか。

「期ずれ」って言われると、当該売上の発生時期と計上時期が少々「ずれ」てしまいました、っていうテクニカルな話かと思っちゃいますよねー。

 

当社では今期に計上していいと思って計上したのですが、監査法人から次期にするように指導されました。見解の相違です・・・というような印象を与える書きっぷりです。

 

ちなみに同リリースには、本件発覚によって訂正した有報や四半期報告書などの一覧が載っていますが、これが凄いボリュームです。

 

同リリースから直接スクショしますと、次の通りです。

 

 

 

なんとも壮観ですね・・・

東証プライム様に鎮座まします業界の老舗にしてトップ企業とは思えない訂正ぶりです。

 

もっとも、「思えない」というのは「普通の業界ならば」という頭で考えるからで、業界そのものが限りなく漆黒に近いグレーに染まっているといえるM&A仲介業界を前提にすれば、「思えない」ではなくて「さもありなん」が正しい反応かもしれません。

 

で、最近はこの業界に対して厳しい特集記事を連発している『ダイヤモンドオンライン』が、これまた厳しく断罪しています。

 

日本MAセンターが売上高不正計上、契約書偽造も…評価急落で「業界序列逆転」か

と題する2022年2月24日5:20配信の記事では、「過去5年間で83件の不正、株価はほぼ半値に急落」と報じています。

 

で、その「不正」の中身を読みますと、あまりの悪辣さにびっくり仰天します。

 

「契約書の写しの偽造は、主にほかの書類から顧客の記名や押印部分をコピー・切り貼りするなどの方法で行っていた。」(2022年2月23日6:01配信Yahooニュース版

 

ええ!!??

顧客の署名や捺印をコピーして、別の契約書に切り貼りしていたって!!

 

立派な犯罪じゃないんですかね?

 

プーチンは大義も名分もない、ソ連時代の版図を回復したいという純粋な私利私欲によって、独立国家への公然たる侵略を行いました。

 

同社は、早く売上を計上したいという、純粋な私利私欲によって、故意に不法行為に手を染めました。

 

プーチンは、ウクライナ国民は勿論、大儀なき戦争によって命を失うロシアの若者とその家族に対する背徳行為を働いています。

 

同社は、投資家は勿論、M&Aの売り手側、買い手側の双方に対する重大な背徳行為を働いたことになります。

 

そして、その全貌はさらに膨張するかもしれません。

契約書の署名・捺印をコピーして切り貼りするくらいですから、そこまで至らない軽微な(全然「軽微」じゃなくても)背信行為など山のようにあるーーと考えるのが普通の神経というものです。

 

さらに業界を見渡せば、もっとお行儀の悪い、もとい、アグレッシブな業者が存在していることは、誰しも知るところです。

 

その会社で同様のことがないとは、現時点で誰も断定できません。

 

今日の標題は優しく書きましたが、本当なら「の蛮行」の3文字の位置を末尾に持ってくるべきかもしれません。

 

なお、外部の弁護士と公認会計士による本件「調査報告書」(表紙や目次を入れて65頁)の全文が公開されています。

 

これを読むと、M&A仲介業という業種で株式を上場することが果たしていいのかという、根源的な疑問が再燃します。

 

本欄が警鐘を鳴らし始めた2017年5月には、この「両手仲介」に対するモラルハザードを懸念する声は超少数派でした。

 

「だから言わんこっちゃない」というのが、正直な感想です。