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撤退が出るのも産業進化の1過程

なんでもそうなんですが、前向きなことは積極的にアピールしたいものです。企業が新商品を出すときには、メディアを集めて発表会やら記者会見などのイベントを大々的に開催します。

 

反対に、撤退とか事業中止などの敗戦処理は、できれば人に知られないように、ひっそりと行われます。几帳面なIRをしない企業では、リリースもなく勝手にやめちゃうことも珍しくありません。

 

こういう事情から、新規参入の研究は比較的やりやすいのですが、撤退の研究は困難なことが多いものです。

 

なので、ここに掲げたような地味なベタ記事(日経新聞、2022年4月21日)でも出してくれると助かります。

 

海外の有力業者が次々に撤退しているうえ、日本でこの産業を創始した出前館の業績も冴えない状況が続いています。

 

出前館が社名を創業時の「夢の街創造委員会株式会社」を名乗っていたころ、歴代社長さんたちの講演を聞いたことがありました。

 

創業者の花蜜さん、2代目の中村さんとも、別々の研究会の講師として出てこられたのですが、偶然にも両方の機会にめぐり遭いました。

 

お二方とも創業期の経営者としとして明確なビジョンと、事業成功まで諦めない執着性という2つのポイントを感じさせる、熱い想いに溢れた話しぶりが印象的でした。

 

実は、このような一般消費者に広く使ってもらう事業は、中小企業向けとは言えません。

 

受発注処理、配車手配、代金決済などに多額のシステム投資と、24/365体制での人的コールセンター投資が膨大になる宿命にあるからです。

 

そのうえ、Uberという世界の巨人が参入してきてしまいました。

顧客の奪い合い、配送担当者の奪い合いのために、広告宣伝費が天文学的に上昇しています。

 

せっかく無人の原野を少しづつ自分の手と足で開墾していった大地は、後から来た渡来人によって易々と蹂躙されていってしまいました。

 

いまはLINEの持分法適用会社となりました。つまり、ヤフーということです。

ソフトバンク対ウーバーと見ることもできます。

 

産業構造の栄枯盛衰の過程では、産業の生誕期から、得意領域で成長するものが出現する青年期を経て、規模拡大の競争に陥る中年期に入ったということができます。

 

ここでは、体力勝負の長距離マラソンが展開されるのですが、マラソンとの違いは走る距離が定められていないことです。

 

42.195キロと決まっているのであれば、ゴール地点に首位で到達したものが優勝を勝ち取れるのですが、ビジネスの競争はゴール地点が何キロと決まっていません。

 

普通、ゴールはどんどん後ろへずれていきます。

まれに、彗星のごとく現れた他産業に顧客が移行してしまい、ゲームの真っ最中に突然試合終了となることもあります。

 

それもこれも、市場規模の大きな産業には避けて通れない道です。

大きな産業には、多額の投資と、有力な競合の参入という2つの苦難が待ち受けていることは、最初からわかっていることです。

 

中小企業には、大衆社会に目立つことなく、少数のコアなファンにだけ訴求する地味目の事業に特化することを奨めているのもこのためです。