そのM&A、大丈夫ですか?

 

空前のM&Aブームです。

時あたかも、“中小企業の後継者難” といわれない日はない状況です。

 

そういう背景もあって、従来は大企業や外資が中心だったM&Aに、

中小企業もまた主要な登場人物となって活況を呈しています。

 

実際に、中小企業のM&A仲介業者の業績も急成長しており、それを裏付けています。

 

ところが、大企業でも失敗することが多いM&Aに、いきなり中小企業が出てきても、

その失敗する確率はもっと高いのではないでしょうか?

 

一般的に、M&Aの成功確率は、思われているほど高くはないのです。

何をもって成功とか失敗と定義するかについては定説はありませんが、

M&Aをなかだちしている人たちによれば、成功と言えるのは全体の20%もいかないようです。

 

これは大企業も含めた数字です。

いうまでもなく、経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)において劣位にある中小企業においては、

その成功確率は、もっと低いのが実態でしょう。

 

中小企業には資金がないので、優良な売り物件の案件は滅多に持ち込まれません。

来るのは倒産案件か、大企業がスルーした売れ残りというのが通り相場です。

 

店舗の不動産物件と同じです。

非常に立地の良い場所は、紙になって出回ることは絶対にありません。

いくらでも借り手がいるので、最高の条件を出しそうな借り手候補に、内々に伝わって

進出が決定してしまうからです。

 

従って、「借り手募集」「稀少な好立地」などと書いてあるチラシは、

「プロの借り手にはダメだと言われましたので、素人さんを募集します」

と言っているのと同じなのです。

 

M&Aの「売り情報」も同じ傾向にあります。

良い情報は、一般公開される以前に、買い手が決まっています。

 

一般公開されていたり、未公開であっても厳しい経営状況にある会社の場合には、

それだけで一概にダメと言う訳ではないですが、そのような案件を買うに際しては、

買い手に十分な対処経験や対処ノウハウが必要です。

 

ところが、書店に行って数あまた売っているM&A関連書籍を見ても、

あるいはインターネット上のM&A関連のサイトを閲覧しても、残念ながら

中小企業の経営者の方々に直接参考になるようなものは、(滅多に)ありません。

 

それでも、仲介屋さんなどに「これは絶対良い案件ですよ」などと奨められると、

自社にそのような話が来たこと自体からして嬉しいこともあって、もう「買いたい」気持で

いっぱいになります。

 

子供の買いたい病と同じです。

 

子供が「おもちゃ買ってぇ~!」と泣き叫んでも、親が買わなければいいのですが、

中小企業の経営者は、自分で決めてしまえばいいので、子供より筋が悪いことになります。

 

ところが、中小企業に参考になるような手引きはありません。

社内に専門人材もいない、顧問の会計士も弁護士も置いていない、そういう状態でも

M&Aを成功させるには? という観点で書かれた本は売っていません。

 

仕方がないので、出たとこ勝負、無手勝流でやってしまうことになります。

「買いたい病」に侵されているので、「冷静に考える」ことはできい症状になっているからです。

 

結果は、残念ながらわかりきっています。

勝つのは運だけ、あとの大半のケースでは、「やっぱり」負けてしまうのです。

(問題は、買い手が負けても仲介業者は関係なく潤うということですが、

それを書き出すと長くなるので、ここでは触れません)

 

中小企業にもキャッシュリッチな企業はあります。

そういうところには、金の臭いを嗅ぎつけて、仲介業者が「優良な」案件を持ち込むことがあるのは、これまた事実です。

 

カネがあるから買うことはできます。

しかし、買えるのはその企業の力ではなくて金の力であることを、こう言っては大変失礼ですが、

成金は個人でも法人でも忘れてしまうものです。

 

買うのは金さえあれば誰でもできますが、買った後にキチンとマネージするのは

人材であり、ほかの経営資源も含めた総合力なのです。

 

この段階になって中小企業ならではの資源不足が露呈します。

買収先の日常のマネージは、経営者1人では到底できないという(当然の)ことをやっと悟るのは、

買収先の業績が(数字として)悪化してからなのです。

 

さらに、世の中に出ている書籍や専門家の提言集にあるような、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション=買収後の経営統合)運営マニュアルは、使えないことが殆どです。

というのは、それら既存の参考書は、優秀で厚いミドル層の存在を前提とした大企業向けに作られており、意思決定構造において経営トップ1名の影響力が大きい中小企業の実態に合わないからです。

 

幹部が正しいことを考えたとしても、創業者であったり創業家出身であるトップの声には逆らえません。

大企業と異なり、すべてのM&A案件が最初からトップに直接入って来るので、

優秀なミドルが途中で握りつぶすという大企業ならではの統治機構が働きません。

 

なので、本来ならM&Aをやりたい中小企業のトップは、M&Aのイロハに自ら精通していなければ

ならない構造にあるのですが、そのような素養のある人は殆どいないのが実情でしょう。

 

学者の先生は、これまでM&Aというと上場企業のことばかり研究してきました。

ジャーナリズムは面白ければいいし、M&A業界は案件の回転数が上昇すればよいので、

なまじ買い手が慎重になって回転数が減速するような政策面に賛同するものはいません。

 

加えて、大企業であれば巨額を投じた大型買収でもない限り、1件の失敗で組織が存亡の危機に

瀕することはありませんが、中小企業の場合には、比較的小規模の案件であっても、

内部留保の規模が桁外れに小さいため、1件の失敗が命取りになる場合も大いにあります。

 

このような状況にあるのに、中小企業向けのM&Aの手引がないばかりか、

情報発信が当該案件で手数料を得る立場の仲介業者から一方的に流されているので、

少ない情報をそのような当事者に依拠することになり、公平中立で売買当事者である

中小企業の利害に合致しているとは言いがたいデータが加工され、マスコミや学術の世界でも

それが前提にされているのは、誠にゆゆしきことと言わなければなりません。

 

M&Aというと、どうしても「時間を買う」「資源を買う」などの表現に見るように、

手間暇を省略するというニュアンスが漂っています。

これは、「手塩にかける手間」と「額に汗水たらす努力」と「石の上にも3年」という

長期忍耐型の日本型賞賛物語の対極を行くものとして、旧来の心象からは疎んじられる傾向にありました。

 

しかし、後継者難と急速に進行する大手寡占化の流れは、もはや誰にも抗いがたく、

非情にも速度が速まることはあっても留まることはない状況まで追い詰められています。

 

ここにおいて、中小零細企業のみで構成されている旧来型産業のプレーヤーが殆ど退出してしまった

としたら、その産業自体が消滅もしくは少なくとも独占によって、社会経済的厚生が著しく毀損される

こととなるのも、あながちあり得ないこととは断言できません。

 

中小企業は中小企業論という別枠で議論すべきものであって、経営学はあくまでも大企業のことを

扱うのがメインストリームである、ということは、これまで公式な表明はなくても、

学術界の経営学者は殆どが、数量分析には大企業のデータを用い、事例研究には大企業の例を

採り上げてきたことは事実です。

 

中小企業のデータが取れないというテクニカルな制約はあるにしても、どこかで中小企業は

保護・育成という公的政策面の対象であって、熾烈な競争の土俵に上げるべきではないという

一種の深謀遠慮があったのか、はたまた昔のマルクス主義経済学の搾取論の系譜が亡霊のように

現れているのか、それはわかりません。

 

かといって、中小企業では後継難が重大な問題化しており、徒にM&Aを否定することは

中小企業経営者の利益にもなりません。

 

そこで、

・健全なM&A

・成功しやすいM&A

・避けるべきM&A

などについて、中小企業向けに指針を提示することが、公平中立な立場で長らく莫大な事例調査と

データ分析を蓄積してきた学術界の責務ではないのかと考えました。

 

しかし、学術界は急速に「論文業績評価主義」になっており、「業績」を評価されやすい領域で

研究を進めるのが学者の自己防衛になっているのです。

 

それもあって、学界の研究対象はいまもって大企業が中心です。

中小企業の事例研究も数多くあるのですが、その場合には、取材の相手に入れ込みすぎて、

社史のようになってしまっているものが大半といってよい状況です。

 

要するに、学者や会計士、弁護士などの書いた本や論文などをいくら見ても、

後進の経営者が踏まないべき轍とか、反面教師にすべき警戒ポイントなどについて、

中小企業の経営者が本当に必要としている事実の解明は殆どなされていないのです。

 

反対に、書店のM&Aコーナーや実用書コーナーには、実務家による中小企業向けと思しき本も

あることはあります。

 

しかし、これらは著者の少ない経験を針小棒大に膨らませたものが少なくありません。

今流行の言葉でいうならば、「盛ってある」のです。

 

読めばわかりますが、各著者の得意分野は詳しく、不得手もしくは未経験の領域に関しては、

書いていないのは良心的であって、通り一遍だったり、中には非常疑わしいことをもっともらしく

書いてある本もあります。

 

 

「トンデモ本」と紙一重です。

 

「シナジー効果」とあったら要注意です。

それは、書いている本人が良く理解できない時に、非常に便利な用語だからです。

 

上場企業のプレスリリースで、M&Aの理由として「シナジーがある」と書かれているケースでは、

「買いたい病」であって、本当に具体的な目的があることは少ないと思います。

 

当研究所では、M&Aの成功例ばかりではなく、中小企業、中堅企業による過去に現実に発生した

「失敗例」を多数調査し、分析しています。

 

そこから、単なる事例の羅列ではなく、

・成功するM&A

・失敗するM&A

に共通しているエッセンスを抽出しました。

 

当研究所はM&Aの仲介もしくはFA業務は行いませんが、セカンドオピニオンを提示いたします。

 

会計士系の事務所のような「対価算定におけるセカンドオピニオン」ではなく、

・本当に貴社にとって意味があるのか?

という、本質的な戦略面から、専門的なフレームワークと学術研究の知見に基づいて、

中小・中堅企業の経営者の方向けに特化したプロフェッショナルとしての見解を提示いたしております。