上場企業の高給ランキング

日本の上場企業の上位10社ランキングに、中小企業M&A仲介業者が3社もランク入りしています。

 

6月といえば、3月期決算企業の株主総会シーズンです。総会を迎えると、決算期の会社は新しい有価証券報告書を公開しますから、その時点でデータの更新が必要になるので、いまのうちにこちらの表を提示しておきます。

 

これは、日本市場に株式を上場している企業を対象として、2018年6月4日時点で公開されている有価証券報告書に記載された情報を基に、当研究所が集計したものです。

 

有価証券報告書の中にある「企業の概況」という大項目に、「従業員の状況」という小項目があり、従業員数、平均年齢、平均勤続年数とともに、平均年間給与を開示することになっています。

 

一般的なイメージで、「給料が高そう」と思われているメガバンクや広告代理店は、上位10社のランク外となっています。また、財閥系の総合商社も三菱商事が11位でランク外となりました。

 

マスコミ(テレビキー局)が目立ちますが、各社とも持株会社に移行し、現場従業員をすべて子会社の事業会社に集め、上場するHDは管理職中心の体制になったようで、平均年齢の高さに現れています。

 

2位のキーエンスは言わずと知れた我国製造業の超優良企業です。産業用ロボットなどに搭載されるセンサーの開発製造企業で、良い物を高く売るのが特徴で、すべての従業員に非常に高い要求水準を求める反面、高い給与水準となっています。

 

GCAは国際的なM&Aを手掛ける欧米企業数社を経営統合したM&Aアドバイザリー業で、世界10か国18か所に拠点を持ち、日本国内の売上高は連結売上高のうち約3割しかないグローバル企業です。

 

ヒューリックはみずほ銀行系の不動産会社で、持株会社制に移行して一般従業員の多い事業子会社と分離しているため、平均給与水準が高くなっています。野村HDも、野村證券グループの持株会社で、従業員は僅かに127名と開示されていますので、本社の管理職中心の構成と思われます。

 

さて、そんな他社の状況からするとひときわ異彩を放っているのが、1位、3位、10位に堂々ランクインしている新興企業3社です。

 

中でも、第1位のM&Aキャピタルパートナーズ社が目立ちます。従業員の平均年齢31.5歳で、平均給与は2,995万円です。平均31歳で3千万円ということになります。

 

「トップの人が」ではなく、「平均が」です。つまり、この何倍も貰っている人もいるということです。

 

有価証券報告書(有報)は企業情報の宝庫でして、同社の平成29年9月期の有報には、次のように記載してあります。これは、上述の「従業員の状況」欄ではなく、もっと後ろのほうにある各種財務諸表のうち、損益計算書の附属である売上原価明細書の、そのまた注記に書いてあります。

 

「人件費の主な内訳は次のとおりであります。

    給料手当   236,975 千円

    賞与    1,322,239 千円

    法定福利費    97,318 千円」

 

いま、法定福利費を除いて、給料手当と賞与だけを合計した金額に占める賞与の比率を計算してみると、84.8%になります。

 

およそ85%が賞与として支給されているということがわかります。

大雑把にいえば、年収3千万の内訳が、給料450万、ボーナス2,550万という格好です。

典型的な成果報酬型の給与体系となっています。

 

これは、同社の創業者である社長さんが、もともとプレハブ住宅のセールスマンをやっていたということ(これはご本人も講演で必ず強調される経歴です)と無縁ではないかもしれませんが、それはよくわかりません。

 

しかし、ここで明らかにしておくべき事実があります。

 

それは、この表にランクインした中小企業M&A仲介業者3社は、すべて「仲介」と称して企業売買の売り手側と買い手側の両者から手数料を受け取る事業構造を採用しているということです。

 

これは、この3社が公式に認めていることで、別に悪いと思っていないどころか、中小企業のM&Aにおいては「双方の事情を汲んだ仲介方式が望ましい」という旨の主張を折に触れて展開していますので、確信を以てやっていることです。

 

当サイトでは「善悪」を論じることはしておりませんが、「事実としての構造」を問題提起することは厭いません。

 

日本では不動産仲介業という業種が広く普及しており、売り手と買い手、もしくは貸し手と借り手の両者の間に入って、取引の両者から報酬を得ることが長年に亘って行われてきました。

 

そのせいかどうか、企業売買においても、このように1社のみが間に入って取引の双方から報酬を得る形態が公然と行われています。

 

しかし、この取引形態は「双方代理」という問題を完全に払拭することはできません。

 

売り手は高く売りたい、買い手は安く買いたい。当然のことです。

だから、売り手と買い手の代理人は別々の専門家が就任して、それぞれのクライアントの利害を背負って相手方との交渉に当る訳です。

 

その代理人が1人で双方の内情を知悉していたら、公正な取引は成立するのでしょうか?

 

いま、日本の中小企業M&A市場で最も活況を呈しているのは、調剤薬局業界です。

大手チェーン同士が猛烈な勢いで店舗網の拡大競争に凌ぎを削っています。

 

買い手は、シリアル・バイヤー(連続して次々に買収する買い手)なのです。

仲介業者は、このシリアル・バイヤーにひとたび気に入られて、次々に案件を持ち込んで取引成立に持ち込めば、自社の営業成果がどんどん向上することになります。

 

これは、仲介業者という法人だけでなく、その担当営業マンという個人にとっても同様の構図となります。

 

反対に、売り手企業は、複数の事業部門や複数の店舗を数回に分けて切り売りするようなケースも、無いとはいえないでしょうけれど、基本的にはM&Aの売り手になるのは1回きりです。

 

ということは、買い手は常連客、売り手はフリの客、という構図になりやすいのです。

 

この構図において、間を取り持つ業者が、「安くしろ」「高くしろ」という双方の利害を調整しきれずに、ギリギリの局面でどちらか一方だけの言い分を採用せざるを得ない状況になったときに、どういうことになるか?ということです。

 

この基本構図に、さらに上で指摘した極めて高率の業績連動の報酬体系が存在するのです。

 

これで、モラル・ハザードが全く存在し得ない、と断言できるのでしょうか?

 

売り手は、安く売らされることはないのでしょうか?

買い手は、戦略的に適合しないような案件を推奨されることはないのでしょうか?

 

モラル・ハザードの可能性があるので、こうした両手仲介=双方代理には一切手を染めない、と明確に表明しているM&Aアドバイザリー業はたくさん存在します。

 

ランク表の第5位のGCAも自社のホームページで、そのように明確に宣言しています。

中小企業のM&A専門の、もっと小規模なブティック型のアドバイザリーの中にも、そのような考え方は当然のこととして公式に表示しているところは多数あります。

 

M&Aを検討される経営者の方は、こうした点についてよく考える必要があります。