Q10 M&Aで買う側の者です。買収会社の社長を買収後も続投させたほうがいいのでしょうか?

 

A10 両方あります。

一般には、とくにオーナー社長の場合には、その人個人の人間性や魅力などで従業員や顧客、仕入先がついてきていることがあります。この場合には引き継ぎ期間を十分に確保して、当人がリタイアしても問題なく回ることに確信が持てるようにすべきです。

交代に際しては、旧社長を会長や顧問、相談役などの名誉職で処遇し、本社の良い場所に個室と上等な応接セットを与えると、本人の心細さや後悔の念を防ぐ意味もあります。そうすれば、以前のVIP顧客などが訪ねてきたときにも、安心して取引を継続してくれる効果もあります。

これには、反対の意見もあります。

当所に寄せられた実話では、買収後も社長として続投させていたところ、高級輸入乗用車を社有車として購入するなど浪費が目立つようになったという事例もあります。監視役の役員を派遣したものの、幹部も従業員も取引先も、みんな以前の社長が続投しているので社長のワンマン体制のままで、制御できなかったという話です。

年齢も重要なファクターです。個人差はありますが、一般的に70歳を超えるまでは、オーナー経営者はそう簡単に影響力を失うことはないのが普通です。その影響力は目に見えない部分が多いので、買収側でコントロールするには、ニッチなノウハウが要ります。

これも実例ですが、こうしたことを恐れて、完全に退任させた旧社長のもとへ、以前のVIP顧客から電話で相談があったので、旧社長は自分は既に関係が切れていると伝えたところ、そのVIP顧客が同業者に取引を変更してしまったとのことです。