能楽にファミリービジネスの深淵を観る

 

 

先日、国立能楽堂の定例公演に参りました。

 

観世流宗家26世の観世清和のシテによる自然居士でした。

この自然居士は、観阿弥の作品です。

 

今年は、観世流創始者。観阿弥生誕685年にあたります。

 

さて、この日、シテが掛けていた喝食面は、なんと初代・観阿弥から代々伝わる面だそうです。

 

観阿弥が西暦1300年代に足利義満の前で舞っていた面が、700年近い時空を超えて今に伝わっているというのも感嘆すべきことです。

 

それがなんと、博物館や宝物展などで陳列されているのではなく(実際、この面は銀座のデパートの宝物展で展示されていたそうですが)、いま、自分が観ているその目の前で、掛けられて舞われているのです。

 

しかも、です。

それが宗家の直系子孫、26世当主による舞です。

 

私も、家業人の端くれとして、能楽堂の舞台で行われていることに、非常に感動しました。

 

能楽も家業といえるでしょう。日本でも最も古く、最も永続している家業の1つと言ってよいでしょう。

 

金閣を建立した足利義満の前で舞ったときに染み込んだ観阿弥の汗が、そのまま26代後裔によって体感され、さらに今、新たな汗を染み込ませて、のちの世代に伝承されていく、その営為の瞬間に自分は生で立ち会っているのかと思いをはせていたら、無上の感銘を受けました。

 

ファミリーとその営為の永続性の深淵を感じた公演でした。