アメリカ大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が、アメリカンリーグの年間MVPに選出されました。
このことについて、日本の財界人からも次々に称賛する声が上がっています。
これには、痛切な違和感を感じ、苦笑を禁じ得ません。
大谷選手が日本ハム時代に二刀流を始める時には、高名な野球評論家の中にも「二刀流など無理だ」という論調が支配的でした。
いわゆる「専門家」によって無謀と酷評されている企画を、トップの責任において承認できた経営者が果たしていたのでしょうか?
プロ球団の経営者のことを申しているのではありません。
普通の事業会社の経営者のことを申しております。
財界人各位は、本業は大企業の経営者であります。
自分が経営している大企業は、イノベーションが枯渇して業績の長期低迷に喘いでいるところが多いではありませんか。
大谷選手の二刀流を称賛しているのは、自分とは全然関係ないスポーツの世界だからと気を許してしまっているのでしょう。
自社の社内から、前例のない、荒唐無稽に思える新技術開発や新規事業の企画提案が持ち上がったときに、おたくの社内ではどういうことが起こるでしょうか?という点を指摘しております。
経営トップに上がる以前の段階で、中間管理職たちがリスクや実現可能性などを次から次へとあげつらい、よってたかって潰しにかかるのではありませんか?
そういう社風を放置もしくは温存しておいて、大リーグのMVPを褒めているのは、自分や自社には関係のない「対岸の慶事」だと思っているからなのでしょう。
大企業の経営者は、今回の大谷選手の空前の活躍を見て、「こりゃ、自分の会社の問題だ」と自省することから始める必要があるのではないでしょうか。
二刀流とは、冒険家の単独偉業ではなく、すぐれて組織論なのであります。